連載17
 世界中がマーケット―全世界を相手に水産物を売り込むノルウェー。その戦略は多くの国や地域で成功し、日本でもサーモンやサバなど、ノルウェー水産物は確固たる地位を築き上げた。今や「水産先進国ノルウェー」。日本においても、そう呼ばれることが多い。小規模漁業から効率的漁業へ。漁業の歴史が長いだけに、血と汗と涙を流し取り組んだ漁業改革によって現在の地位を確立した。
 視察ツアーを通じ痛烈に感じたのは、行政、産業界を含めた水産業界が、目指すべき方向性をぶれることなく共有していること。国際貿易の荒波の中で、決して甘やかされることはない。漁業者にも相応の努力が求められる。「商売が繁盛するために何が必要か」。その答えが現在の漁業制度であり、販売システム、輸出審議会、そしてベルゲンを中心とした水産研究都市であった。
水産先進国で
    あり続ける理由
発展に何が必要かを明確に
ノルウェー水産業を解説してくれたハンス・ぺター・ネスNSEC日本事務所代表
(2008/11/13(木)掲載)
■石油頼みは限界
オスロの港で魚介類を販売する漁船
 水産物輸出が国家プロジェクトで動く背景には何十年後に枯渇すると試算される石油や鉱物資源の問題がある。輸出額の7割を占める国家を支える産業だが、「有限資源」だけに楽観的な見方はできない。余剰利益の運用など、将来を見据えた手を打ってはいるが、成長産業としての期待度は水産業の方が上。「有限資源」の恩恵を受けるからこそ、魚といった天然資源の保護には、他国以上に気を使う。
 海洋投棄は一切禁止。漁業分野においては、欧州連合(EU)の規制の一歩先を行く。さらに、国際舞台でも漁業管理を先導する。世界的に漁業規制の波が押し寄せる中、それを逆手に、産業として成り立つ持続的漁業を確立する。日本近海も中国や韓国など、これまで以上に連携を密にしていかなければ、漁業の問題以前に魚が消えてしまいかねない。
■日本の漁業改革
 ノルウェーの漁業を視察し、業界が一丸となり得る目標や方向性の策定・合意や、調査研究・政府・規制の三権分立は日本の漁業界にとって、参考になる戦略であるように思えた。
 日本国内では漁業改革についての議論が始まったばかり。規模も背景も違う海外の制度を物まねするだけでは、「正解」にはたどり着かないだろう。一方、楽な道を選べば「衰退」から逃れることは難しい。漁業者にとって「持続的利用の重要性」は百も承知。ただ、もうからない現状では、何を言っても絵空事になってしまう。もうけることは悪いことではない。逆に、もうけられない現実が大きな問題。現実から目をそむけず、一番大きな問題点から重点的に解決に導いていくことで、次の手が打てるのではないだろうか。
 最後に、ツアーのために奔走し、現地でさまざまな貴重な体験をさせていただいたNSECのハンス・ぺター・ネス日本事務所代表、通訳などでサポートをいただいた成田恵美子コスモ・ピーアールアカウントマネージャー、現地通訳のブルードヴィク高橋明子さんをはじめ、お世話になった関係者にお礼申し上げたい。(東京支社・磯崎真) おわり