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県内駅弁、歴史に幕 唯一の製造元が月末で廃止決断
2015年4月9日(木)掲載
「瓦そば弁当」や「ふく寿司」などが並ぶ駅弁コーナー。5月には県内から駅弁が姿を消す=8日、山口市小郡のJR新山口駅
地元の特産品を詰め、鉄道の長旅に欠かせない「駅弁」が姿を消す―。山口県内で唯一駅弁を製造、販売している「小郡駅弁当」(山口市小郡下郷、国森武徳社長)が4月末で駅弁事業を廃止することが分かった。列車の高速化で車内で過ごす時間が短くなったことや、より安い弁当を求める消費者ニーズを受け、100年以上続いた県内の駅弁文化の歴史が幕を下ろすことになる。

「文化としていつまでも残したかった。残念だし、寂しい。時代が変わったのかな」。国森社長は需要の落ち込みを廃止の理由とし、苦渋の決断を振り返った。

同社は明治後期の1910年に弁当の製造販売を手掛ける「かしべ」として創業。以後、小郡駅弁当に改称、国鉄小郡駅(現・JR新山口駅)を中心に駅弁だけでなく仕出しや駅構内のうどん店などの事業展開を進めてきた。多くのメディアに取り上げられ、駅弁がブームとなった90年代前半は下関だけで年間売り上げ7億円、新幹線の車内販売で2億円と好調な時期が続いた。

しかし2000年ごろに車内販売から撤退し、年々売り上げは落ちた。駅構内での販売を続けるも、新幹線や特急列車のダイヤが充実したことや、駅構内で買える安価なコンビニ弁当などが台頭したあおりを受けた。

同社は2010年に経営の効率化を目指して下関駅弁当と徳山駅弁当の2社と合併。ロングセラーの「かしわ弁当」や下関の特産を扱った「ふく寿司」「瓦そば弁当」のほか、山口線を走るSL「やまぐち」号の写真を容器にデザインしたアイデア弁当などを打ち出して再起を図った。それでも需要は落ち込み、14年度の売り上げは約3億5千万円ほどだった。

現在は新山口駅構内の土産店など4店舗のほか、土、日曜限定で新下関駅などで販売を続けている。新山口駅のある店舗では、1日平均160〜180個が売れ、完売する日もあるという。

販売員の一人は「旅行を楽しむために買い求める人や味目当てで自宅で食べる人もいる。山口の味なので、販売する側としても廃止は残念」。同駅で新幹線の乗車前に駅弁を購入した長門市の会社員男性(59)は「昔はよく駅で買って車内で食べていた。これも文化なので続けてほしいのだが」と惜しむ。

同社は駅弁事業の廃止に伴い、仕出し事業もやめる。今後はうどん店を中心とした飲食業に力を注ぐといい、国森社長は「これまでのご愛顧に感謝している。最後に駅弁を利用して、味わってくれればうれしい」と話している。駅弁は30日まで販売する。
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