山口新聞 ふるさと創生へ 県民とともに

防府のうどん屋、あす36年の歴史に幕 元学生ら惜しむ
2017年9月29日(金)掲載
36年にわたり、店を切り盛りしてきた篠原三夫さん(左)と光恵さん夫婦=28日、防府市
学生向けの「バカ盛り定食」を完食すると名前を書き込めるノート。1984年の1冊目(手前左)から現在251冊目(同右)に
防府市天神の天神町銀座商店街近くのうどん屋「丼丼(どんどん)」が30日に閉店し、36年の歴史に幕を下ろす。学生向けの定食メニューが好評で、親子で訪れることもあるという。閉店を知ったかつての常連客が、慣れ親しんだ味との別れを前に足を運んでいる。

店には歴代のノートがずらりと並ぶ。看板メニューの学生向け定食の完食者だけが名前を残せるノートは1984年に始まり、251冊目に。「人とのつながりを持てる店にしたかった。小さいうどん屋でも、36年間の重みをひしひしと感じる」。70歳という年齢を区切りに閉店を決めた篠原三夫さん(70)=山口市下小鯖=はそう振り返る。

山口市出身で神奈川県の鉄鋼会社に勤めていた三夫さん。「人生は一度きり」と自分の店を出すことを決意したのは34歳の頃。妻光恵さん(67)と共に81年にJR防府駅近くにオープンし、84年に現在地に移した。手打ちのうどんは自宅そばの地下水をくみ上げて仕込み、米も自前で育てる。

移転後に打ち出したのが学生限定の「バカ盛り定食」(600〜780円)だ。うどんと丼の量が各1.5倍で、部活動を終えた高校生らが足を運ぶ。20年前に受験の験担ぎで年間70回食べると宣言した高校生が、昼休みを抜け出して達成したエピソードも。

8月に店内に閉店を告げる張り紙をしたところ、ネットを通じ、県外に住む“元学生”たちが詰め掛けた。今月28日に訪れた周南市のレースメカニックの男性(27)は実家が店の近所で、幼い頃から通い詰めたという。学生時代に食べたバカ盛り定食は「名前をどれだけ書けるか同級生と競っていた。ここの味が染み付いている。さみしい」と惜しんだ。

来店客の中には閉店を知り涙ぐむ人もいるという。光恵さんは「静かに開店したから、ひっそりと閉めたかった。こんなに来てもらえるとは」と感謝。「二人だけの店ではなく、客と共有していたと初めて気付いた」と三夫さんは明かす。

今後は、自宅裏の里山を子どもたちが遊べる場に整備するなど地域おこしに力を入れる。「余力があるうちに役に立ちたいから。またゼロからの出発」と笑顔をのぞかせた。
戻る
山口新聞ホームへ

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます。すべての著作権は山口新聞社に属します。
 Copyright(C)Minato-Yamaguchi Co.,Ltd.
お問い合わせは電子メールyedit@minato-yamaguchi.co.jp