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四季風

何十年前になろうか。山口新聞の入社試験を受けた際に、作文が課された。「秋」。このテーマで好きに書けと。当時の編集局長は後年作家として独立した古川薫さんだった
▼秋を連想させるブラームス、島崎藤村、舟木一夫の3人を列挙した。白状すれば、たまたま好きだった作曲家であり文豪であり流行歌手。それを強引に秋に結びつけたのだが、当時、自分の中では寂寥(せきりょう)の言葉が3人に共通していた
▼藤村の『若菜集』に所収の「秋風の歌」がある。その第5連「清(すず)しいかなや西風の/まづ秋の葉を吹けるとき/さびしいかなや秋風の/かのもみぢ葉にきたるとき」
▼そこに吹く風は爽やかでありながら、生命の衰えを予告するような寂しさを伴う。底抜けの明るさは、この3人からは到底うかがいようもない、と感じていたのを思い出す
▼秋がおかしい。大きな台風被害もなく、今年の紅葉は見事だろうと楽しみにしていたらこの雨。週末には強く発達した台風が接近、秋雨前線を刺激しそうだという
▼降り続く雨の中に、朝顔が1輪咲いていた。歳時記では昔から秋の季題である。小さな庭で心もち唇を開けるように遠慮がちな10月の朝顔が、とてもいとおしく感じられた。(佐)
2017年10月17日(火)掲載
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