山口新聞

四季風

もう40年近く前になる。全国的にゆっくり歩こう運動、ユックリズムが提唱されたことがある。わが国が高度経済成長を突っ走り、クルマ社会が到来したころだ
▼このままでは現代文明の技術とハイスピードが、地球や人類の危機的状況を加速させるばかりだという懸念が背景にあった。しかし車の便利さ、相次ぐ魅力的な車やその高性能化でわが国の車産業が世界を席巻するにつれ、運動の趣旨はかき消された
▼通学児の列に車が突っ込む悲惨な事故の多発、疲れ切った運転手がハンドルを握る深夜走行のツアーバス惨禍の報道に触れながら、かつてユックリズムの裏でしきりに言われた「走る凶器」の言葉をあらためて思い出す
▼日ごろ、歩道と車道の明確な区分のない道を、猛スピードで走り去る無謀ドライバーを見るたびに、免許を奪い取りたい不謹慎な衝動にかられたりする。どこまで「凶器」を操っている自覚があるのか
▼大事故が起きないと関係機関は車優先や経済優先の本音をなかなか引っ込めない。通学路の安全策を住民が訴えている地域が、県内でもいかに多いか。「予算がない」と一蹴する行政の姿が、大惨事を受けて急に動き始めた為政者に重なってくる。(佐)
2012年5月4日(金)掲載
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