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保男窯展示場で。作品は「粉引彩捻六面花器」(径45センチ、奥行き39センチ、高さ44センチ)
 花器に代表的だが、手びねりで立ち上げたそれは、6面だったり3面だったり、ひねりが加えてあるものも。そこに装飾をほどこす。高い技術を誇るように、いろんな形を作りさまざまな模様を付けて、評価を受けてきた。
 ただ近年、40歳を過ぎて、「柄ジャケットに柄シャツを着ているようなものから、白シャツに変わった」
 「足して足して、足して駄目ならまだ足して」いたが、柄に柄を合わせることに違和感を感じるようになった。つまり、引き算に変わった。模様をすべて取ろうと思った。「気付くのが遅かったが、余白の美しさに気付いた」
 装飾のモチーフは若いころから順に「箔」「炎」「葉脈」と変わり、形と模様の組み合わせでやってきた。けれど、模様を取ってみた。
 代表作「粉引彩」シリーズは、「粉引箔彩」「粉引炎彩」「粉引葉脈彩」から模様を取り去って、「粉引彩」となった。
 「そうすると、形が見えてくる。形がよりいい形になる、窯変がより美しくなったはず。萩の土独特のやわらかな模様になった。形はシャープで硬いけれども釉調はやわらかい。(形と模様が)マッチしている」
 思いついたらすぐ実行だったが、最近は考え、引き算するようにしている。もう一つ欲しいのを我慢するのが、伝統工芸のコンセプト−との思いを強くしている。
 1989年、24歳で日本伝統工芸展に初出品初入選。以来壁などなかったようだが、30歳過ぎに苦しかった。このままではいけないという気持ちがあった。
 完全主義者で、九十パーセントでは満足できない。体がもたないが、「完全、完全、毎日百二十パーセントでやると、結局クリアすると、うまく行っているような錯覚に陥る」。
 モチーフを変えるだけでは駄目で、性格を変える必要があった。多分苦しみのあまり、あるいはひょんなことから力を抜いて仕事をした。「ちょっと九十パーセントをしてみると、自分の中では次の段階に行く作品ができた」
 模様もだが、形にこだわってきた。師事してきた父、保男さん(山口県指定無形文化財保持者)の作品の特徴は造形にある。影響だろう。
 未婚で、両親と暮らす。「どんどん見聞を広げ、外国にも出てみたい。いろんな経験をして感性を磨く。結婚して子供ができて親となる」。これからの人生経験が、作品の幅を広げ質を高めるはず。
     ◇
 土を素材に成形し施釉、炎で完成させる陶芸で表現する人たちを、若い世代を中心に紹介する。
(文と写真・宇和島正美)
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