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窯展示場で。作品は09年の日本伝統工芸展入選「和紙染花紋鉢」(径53センチ、高さ9センチ)
 兄と姉が家を出て行った時点で、自分なのかも、と思ったような気がする。高校3年の夏、父藻風さん(1947年生まれ、日本工芸会正会員)の勧めで、焼き物を仕事にしようと決めた。
 きれいなものにあこがれはあったが、「この世界に入ったら、跡取りをしない、とは言えない。大変な決心だった」
 有田窯業大学校に進む。有田出身の父が選んでくれた。
 2年間の本科(陶磁器科製造技術専攻)で、釉薬(うわぐすり)、デッサン、絵の具など主に磁器の工程を学んだ。夜は、下絵教室で水墨画を習う。学校のない土曜と日曜は、ろくろを勉強した。卒業したが、絵付けに不安があった。
 上絵・下絵付技法研修に編入。上絵と下絵を半年間ずつ勉強した。「長い人生の1年なので、みっちりやっておきたかった」。やらないで帰るのはくやしかったのだろう。有田で、「焼き物とはどういうものかを得た」。
 帰って初めて萩焼をやった。陶器は磁器とは別物で、ろくろから違う。土のこね方も違う。「一からやり直す感じだった」
 萩焼の特長の土味をどう表現するか。磁器の薄作りでは陶器の良さは出せない。「陶器の温かみ、土味の良さを表現するには、どうろくろで作っていくか」。帰ってからも大変だった。
 現在師事する父が有田に出るときに言った。女が一人で焼き物をやっていくには、土もの(陶器)しか知らないのでは、弱いのではないか。両方をこなせるように勉強してこい。
 いろんな場面で思い出す、と言う。若いうちに引き出しをどれだけ持つか。持てるようにいまは、いろんなことをする時期。
 生活の糧を得る窯の商品は萩焼で、作家活動の作品は磁器で作る。いろんなお客さんの要望に応じられるようにと、磁器で日常食器も作り始めた。
 焼き物の工程で、一番好きなのが絵付け。絵を付けないのが萩焼の常識だったが、萩焼に絵を入れて個性にしようと思った。
 「人がどうこう言うのは気にしない。やり続けることが大事」。受け入れられるようになってきた。
 作家として昨年から、染付技法の一つ「和紙染」で作品を作る。和紙の上から絵の具を付けるので、和紙の質感が磁器に残る。冷たく硬質な磁器の肌と和紙の素朴な質感。「現代的な感覚で伝統技法を用いて、自分の意匠を施していく」
 新しいものを作るのは楽しいこと。作品を作っていくのは苦しいこと。「焼き物は言葉では表現できない面白さがある」
(文と写真・宇和島正美)
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