山口新聞 ふるさと創生へ 県民とともに

窯場前で。「大きなものを作るときは十分睡眠を取る」。作品は「萩黒彩格子紋様鉢」(径47.5センチ、高さ11センチ)
 〈萩を代表する“白萩釉”の白さが、噴霧された“黒彩”と対比されて、生き生きと表現された作品〉(07年西部伝統工芸展西部支部長賞の選評)
 〈黒彩の変化に富み、かつ、形態と施文の調和が見事〉(08年西日本陶芸展第二部=用の美・実用陶磁器部門=大賞の選評)
 得意とする表現技法「黒彩」への評価である。
 大道土をベースに見島、金峯(みたけ)、地元の小畑土を混ぜた粘土で成形▽ガス窯で素焼▽わら灰釉をかけ▽さらに鉄釉をかけて(吹き付けて)▽登り窯で1250度を目安に本焼する。素焼をガス窯でするが、昔からのやり方でやっている。
 黒彩は、なにか新しいことをして作品の表現にと始めた。白萩と黒のコントラストが兼田知明の作品、と分かるように。
 「白と黒のモノトーンは単純で表現しやすい。ごてごてしたデザインにしてもうるさくない。形に添って展開がしやすい。形によってデザインを変えて行きやすい」
 陶芸を学んだ学校が岡山県で、岡山は備前焼の産地。萩焼とは違う産地に触れて、焼き物にはいろいろなやり方があるんだと分かった。
 備前焼は焼きで勝負して形のシャープさがそのまま出る。施釉しないで素地のままの形を見せる。優しく作ってもシャープに見える。萩焼は形が甘いと、釉薬(うわぐすり)が乗るともっと甘くなる。帰郷して10年。そういうことが徐々に分かってきた。「形が重要だと思う」
 日常雑器とオブジェ(鑑賞陶)、両方を作る。違いは明快だ。日常雑器は使うことを意識しており、見せることの比重は小さくなる。オブジェは使うことは意識していない、見せることだけを意識する。
 30センチまでの皿や湯飲みなど普段使いの作品には、妻のアドバイスも参考にする。「焼き物は女性が使うので、意見をそしゃくして(作品に)使うようにしている」
 もう一人そばにいて大きな刺激を受けるのが父、八代兼田佳炎さん(1949年生まれ)。師匠だが作家同士。互いの作品を客観的に見てアドバイスする。「工程は見る(使う)人には関係のないこと。いかに自分の作品に対して客観的であれるかだ」
 いいものを作りたい。「作ってなんぼの世界。いいものを作っていないと認められない世界」。焼き物を仕事にしてちょうど10年。区切りの年に強く思う。
(文と写真・宇和島正美)
戻る
山口新聞ホームへ

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます。すべての著作権は山口新聞社に属します。
 Copyright(C)2008 Minato-Yamaguchi Co.,Ltd.
お問い合わせは電子メールyedit@minato-yamaguchi.co.jp