山口新聞 ふるさと創生へ 県民とともに

工房で。作品は「萩化粧抜呉須波線刻文花器」(縦47.5センチ、横57.5センチ、奥行き19センチ)。デザインは裏表同じ。
 中学校3年生のころには漠然と、美術の先生がいいかな、と思っていた。美術教師になろうと入学した短大の造形コースは絵画、彫刻、陶芸、染色の4専攻。絵もやれるし彫塑もやった。卒業制作を陶芸にしたのは、一番面白いのが焼き物だったから。
 手びねりから始まって、ろくろを回して少し器の形になるかな、というところまでの2年間。卒業制作が奨励賞になった。
 恩師から窯元を紹介されて話を聞きに行ったが、自信がなかった。焼き物が本当に自分に合っているのか、確かめる意味もあって学校に残る。
 翌年20歳で兼田三左衛門、昌尚さん親子の天寵山窯(萩市)に入った。ろくろの技術を身に付けた。煎茶器、番茶器、菓子鉢や向付、皿類などの食器、なんでも作れるだけの技術は付けてもらった。窯を持つのが夢だった。33歳、1999年末に独立。翌年春に現在地に窯を開いた。
 「10年もいると体が覚えてしまうので、(修業先の)窯のものと似通ってしまう。その色を消していくのが大変だった。自分なりのものが作れるようになるまでが大変だった」
 以来10年余。昨年は公募展で受賞が続いた。審査員、評論家の目に止まるようなものが作れるようになったということ。「ある種の自信にはなってきますよね」
 象眼技法の一種「化粧抜き」に挑戦している。
 見島土の素地に(紙を張りマスキングして)▽大道土の化粧土を置き▽化粧土に針で模様を彫り▽彫った後の溝に呉須を入れ込む。工程は、成形▽化粧土を付ける(スポンジで塗る)▽乾燥▽針で模様を彫る▽掘った溝に呉須を入れ込む▽素焼▽本焼−の順。
 「形は面白いんだけれども使えないものは作りたくない。焼き物は使えなければ意味がない」。先人からのシンプルな思考を基本とする。
 用途のあるものでも作者の名を付ける限りは、その人なりの工夫が必要だ。
 いままでにない形で、使えるものは難しい。形が難しいならデザイン性でとなるはず。「いまのところは形を決めて、それに合うデザインを取り込めないかなと思う」。そういうふうに作っている。
 目標は、作品を見て誰が作ったのか分かるようなレベル。
 性格は外へ向くより内に閉じていくタイプ。とりあえずやってみる、がないとか。じっくり向き合って作品を仕上げていく面もある、考え過ぎて作品がまとまらない部分もある。うまく折り合いをつけて、次の高みを期待したい。
(文と写真・宇和島正美)
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