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昨年の日本伝統工芸展入選作品は黒化粧して鉄釉を吹き付けた。黒の照りを消してマット系の調子で仕上げた。作品は同作品「黒彩線彫水指」(径22センチ、高さ12センチ)
  父、康起さん(山口県指定無形文化財保持者)は萩焼に釉薬(うわぐすり)「伊羅保釉」を復活させた。
 「伊羅保を使えばいいじゃないかと言われるが、それでは受け売り。自分の形と色を見つけなくては、と思いながらやってきた」
 2005年、日本伝統工芸展に初入選。「色と形がある程度納得できて、認めてもらえた」。
 これを進めてみようと思う。「緑釉線文鉢」シリーズとなる。「この2、3年、この形と色は和左のものだと少し認めてもらえた」
 大切にしているのは、「土の塊を立ち上げていく意識、ラインとかフォルムとかを意識して、そこに近づいていこうとする集中力」。
 大きなものは20キロの土を使い、量感豊かなラッパ、大きく開いた花房を想わせる。色は緑釉。意図してはいないらしいが、見る人により、抹茶の緑みを感じさせる利休鼠(ねずみ)、明るい緑みの灰色の深川鼠を感じさせる。鉢の内側は、渦巻き線と釉薬のグラデーションで見せる。
 釉(くすり)は伊羅保を基本に求める緑になるように、素朴な質感が特徴の伊羅保を汚くならないよう、ざらざら感がないように、スプレーガンで施釉する。「磁器と同じでは困るが磁器の持つ質感、可能性を陶で探している」
 敷地内に住まいと仕事場があり窯の火を見て育ったが、反抗期とも重なって、自分の将来にレールは敷かれたくなかった。ただ、焼き物と違うものをやるだけの反発はなかった。確たる目標が見えなかった。
 周囲から勧められ、高校3年になったときには美術系大学にと決めていた。大学生活の中で、焼き物を仕事にすることを確認していく。焼き物の基本は学校で教わった。
 京都で勉強を深め、27歳で帰郷。やりながら技術を身に付けてきた。人との交流も肥やしになっている。2003年に結婚。「自分の中で変化があった。違うエネルギーを貯めることにもなった」
 一番大事なのは形。模様とかはしつこく入れすぎないで、すっきりと仕上げることだ、と言う。「父はやわらかいフォルム、土に逆らわない形に特徴がある。目指しているところは同じ」。自分の形、色を、もっともっと洗練されたものに、と思う。
(文と写真・宇和島正美)
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