山口新聞 ふるさと創生へ 県民とともに

工房の展示場で。手にする作品は「銀彩花器『街』」(高さ33センチ、幅17センチ、奥行き9センチ)
 31歳のときに生まれた長女がこの春、小学校を卒業した。生まれる前は好きなときに仕事ができたが、そうはいかなくなった。抵抗して子どもは二の次という時代もあった。夫は協力的で家事もやってくれるが、どうしても子ども中心となる。大きくなれば、PTAや子ども会。“雑事”が多くなった。
 常に家事のことがよぎる。仕事が切れ切れになる。単純作業のときはいいが、新しいものを作ろうというときはイライラする。「やっとアイデアが出てきたのにご飯を作るのかよ、と思う」。もっと集中できたらと思うが、なかなかできない。
 「作品が年々守りになっていく。この7、8年、あまり変わっていない」
 母になって損ばかりしたようだが、むろんそんなことはない。将来はアーチストが希望の長女が、生きていくには、人のためにならなくてはいけない、人を笑顔にするような作品を作る、と言う。
 「はっと思った。単純素直でいいよねと思った。自分のこれからの作品を作る上でも、忘れてはいけないこと」
 この道に入ったのは現代彫刻家で山大名誉教授の父、川口政宏さんの影響がある。父方の祖父は画家。家にアートがあるのは当たり前だった。ただ、「すごい情熱があってやったのではなく、なんとなく。これしかやるものがなかった。粘土が形になるのが面白かった」。
 家具デザインを学びながら、夏と春の休みに窯元で基礎を勉強。23歳で帰郷して窯元で修業を始めたが、体調をくずしてやめた。療養しながら自宅で作り窯を借りて焼いた作品で翌年、女流陶芸展に入選。援助も受けて25歳で窯を持った。「仕事場、環境があった。自分のものを作るのが楽しかった」。30歳前後まで防府の民芸窯で働きながら、自分の作品を作った。
 テーマは「都市」「宇宙」「自然」の三つ。都市と宇宙は20代後半から。都市をテーマに「街」シリーズを、宇宙をテーマに「宙」シリーズを作る。
 自然豊かな山口で都市とは奇異な感じがするが、10歳まで東京・港区育ち。「(都市は)ごちゃごちゃ人が集まっているので、ぎっちり建物が集っているところに引かれる。『街』シリーズは渓谷をすき間からのぞいたまち。人が呼吸しているのを感じるのが好き」
 大切にしているのはストリー性。ないとわくわくできない。楽しんで作っていれば人に伝わるはず。
 2、3年前から悩んでいる。いままでやってきたことを変えてみたい。やってないことがたくさんある。挑戦しなくてはと思う。
(文と写真・宇和島正美)
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