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窯の登り窯前で。作品は「淡青釉鉢」(径52センチ、高さ12.5センチ)
 水を張ったら、さぞ、と思わせる大きな鉢。日差しをいっぱいに受けて光る水が、どんなにかさわやかだろう。「淡青釉」(たんせいゆう)というオリジナルな釉薬(うわぐすり)で化粧してある。すっきりとした形が印象を強くする。
 この釉薬をかけた、一昨年の山口県美術展覧会の優秀賞の作品を見たとき、陶器というよりは磁器のようだと思った。磁器には青磁があるのだから、なにも陶器でやらなくても、と。
 今回、この釉(くすり)で化粧した大鉢を見て印象が違うのに驚いた。しっとりとして温かな陶器の肌をしている。最初に出合ったときのような、てらっとして硬質な、どこか冷たい感じがしない。2年前の2009年の夏前に完成したのが淡青釉で、県美展の作品はその二つ目の作品だとか。
 「窯をたいているときの温度・湿度は一定にしているが、風の向き、釉薬の厚みの違いによって色のさえが違ってくる。色の微妙な発色が違う」
 窯のどこに置くかでも微妙に違うだろう。登り窯で一定の作品を得る難しさ。作者ばかりでなく、オリジナルな釉薬も進化しなくてはならない。
 山口県指定無形文化財の父、裕さん(1946年生まれ)で八代続く伝統窯に生まれた。一人っ子。美術が好きで行ったわけではないが、将来陶芸をやるには美術大学がいいだろうと、彫刻科を目指して3浪。ただ3年間を無駄にはせず、対象を見る目を養う。大学では、制作姿勢と形の基本を学ぶ。京都での二つの専門学校では、焼き物の基礎(成形と釉薬)をたたき込まれたらしい。
 焼き物には瀬戸や信楽、有田もある。見方を広げたいと思ったが、「そろそろ帰って来い」とスポンサーが言うので05年、28歳で帰郷。父に師事した。
 本来は、ごちゃごちゃしたのが好きだが、ベースができるまでは装飾を控えよう、形のきれいなものを作ろうと、大きなものでは特にラインの美しさを大事にしている。
 基本は萩の土を使うこと。萩の釉薬に創意工夫して自分だけの釉を持ちたい。淡青釉の場合は、白萩釉をかけた後に銅釉を二重がけする。萩の素材をベースにしながら変化させている。シンプルな形を納得いくまで追究したら、釉薬はもちろん装飾も究めたい。
 性格は、のんびり、マイペースとか。茶陶・萩焼には茶と花も知らなくてはならない。準備に怠りはないようで、稽古している。「知識を広げて、自分の幅を広げていきたい」
(文と写真・宇和島正美)
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