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工房で。作品は2010年日展入選作品「インカ想像『時空の流れ』」(高さ36センチ、幅47センチ、奥行き37.5センチ)
 芸術文化の分野で高い水準の創作活動を続け、将来性のある人が対象の、山口県芸術文化振興奨励賞をこのほど受賞した。掻き落とし技法を使い、インカ文明を題材とするデザイン性に勝った作品で、日展など現代工芸系の公募展に出品、入選している。
 「現在手掛けている題材や手法を大切にし、新しい作品を生むことができたら。(インカ文明)シリーズがどういう変化をするか楽しみにしている」と喜びを語る。
 どうしてインカ文明なのか? 作品のテーマを古代文明と考えたが、縄文や弥生はすでにやっている人がいた。古代文明からイメージする素朴で幾何学的なデザイン、形を表現していく中で、資料にあたると、インカ文明のデザインに引かれるものがあった。自分を一番引きつけるものが作品に表れた、ということらしい。
 掻き落とし技法では、薄めた鉄釉を作品全体にかけ、生地土の色を見せたい部分の鉄釉を削り取る。近年の作品では、ろくろで成形▽くし目を付け(インカ文明の空気の流れを表現)▽作品の形を偏らせ▽デザインを描き▽高台を削る▽素焼▽施釉して生地土を見せたい部分のみ釉薬(うわぐすり)を削り取る▽本焼−の作業。
 父(家門さん、1944年生まれ)は焼き物が仕事。身近に焼き物があったが、高校を卒業すると、板前になろうと広島に出た。しかし、向いていないとその夏に帰郷、年末には半導体の基盤を作る会社に入った。
 20歳を過ぎて仕事に慣れると、父の仕事場に出入りするようになった。焼き物に興味が出てきた。「陶芸の仕事をしたい」と相談すると、最初はストップがかかったが、有田の専門学校で学ぶことを条件に許してもらった。翌年、24歳で卒業、父の窯で働くようになった。
 展覧会用の作品、食器や置物などの商品に関係なく、心を乱さずに作ることを心がける。洗練された無駄のない形を求める。
 「省略。ものを言い過ぎてはいけない。ストレートにやりすぎてはいけない。言うことは少しでも理解してもらえる作品が理想」
 そのためには、体力を付け、精神力を強くする必要があると言う。「スポーツをやらないといけない」
 小学校から高校まで剣道、28歳のときから7年間スイミング、その後剣道、そして2年前から再び水泳も。ぜい肉のない体が強い精神を養い、ひいては無駄のない存在感のある作品を生む−という方程式なのだろう。
(文と写真・宇和島正美)
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