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窯展示場で。一目で萩焼と分かる土肌と釉薬の作品に囲まれて。大道土を薄くひいた端正な形に、びわ色が美しい
 短大の2年間でろくろ、釉(くすり)作り、窯たきの基本を習った。自分ですぐやっても、ものにはならない。弟子入りしても未熟で使ってもらえない。あと1年勉強しようと、有田の窯業大学校に入った。
 ろくろをみっちり勉強した。窯で働くなら、ろくろの腕は重要だと思った。
 有田は磁器。磁器土は石を砕いたもので、ろくろで「上にのばしても、下に下がるような感じがある」。粘りがないので成形が難しい。萩の土も粘りはないと言われるが、有田に比べれば作りやすい。
 ある程度ろくろができるようになったので、焼き物の中でなにが自分に向いているのか、短大のときの先生に相談。志野とか萩、茶陶を勧められた。性格的に、優しい焼き物の方が合っているのでは、というアドバイスだった。
 焼き物が持つ雰囲気は、焼き、ろくろ成形、釉薬(うわぐすり)、土から出てくる。優しい焼き物の方が自分に合っている、と思った。萩焼を選んだのは、萩の方がより素朴で、古い物などを見ると茶慣れした美しさ、味わい、そういうものがいい、と思った。
 ここまでは、人生設計の通りだろう。だが、設計図だけで人生がうまく回るとは限らない。21歳。縁だろう。学校を終えると間もなく、4年前に伝統窯に婿養子に入った十二代坂高麗左衛門(1949〜2004、襲名は88年)の弟子となった。
 伝統窯に弟子入りして作るのは、まず色見(釉薬の溶け具合を見るぐい飲み大のもの)。次に湯飲み、徳利、杯、せん茶・番茶器、向付。小さいもの、数をやらないとそろったものはできない。使い勝手も悪い。「作家仕事も大事だが、職人仕事も大事」
 精神的な面も勉強した。「土こし、釉作りも窯たきも、一つ一つのものにこだわって作るということ」。
 31歳。10年の期限が来て独立した。
 秋吉台のはずれにある登り窯は自分で築いた。まきは松材を5年分ほど用意している。土づくり、成形、削り、乾燥、素焼、施釉、本焼。工程の一つ一つに全力を出したい。
 茶道具を中心に制作している。目指しているのは桃山時代の茶わんの雰囲気。当時の陶工は、もっとおおらかに作っていたのではないか。だから、桃山の焼き物が持っている雰囲気は柔らかい。
 人と同じことをやっていても、自分らしいものはできない。昔ながらの萩焼から離れたものではないが、「自分らしい萩焼。おおらかなものを作りたい」。困難な道だが、意志は強いと見た。
(文と写真・宇和島正美)
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