| 「走る理由−9」 |
| 金子 誠一(山口市、県職員) |
よく人生はマラソンに例えられます。私にとって走ることは、きこえなくてもできることであり、多少イヤなことがあっても走れば忘れられるという理由が大きかったのですが、次第にマラソンを通して人生を教えられ学べることの大きさに気付くようになりました。
日々の生活では、きこえないがゆえの不便や困難、また時に辛さや悲しみもあります。できない自分を人と比べると惨めになり、思うようにならないもどかしさを感じることも多いのですが、他人との比較でなく自分の基準で努力すること、状況を受け入れて最善を尽くす姿勢の大切さをマラソンは教えてくれます。試練や不遇を経験しておく方が後に大きな幸運に出会えることを身を以て経験してきました。何気ない会話にも苦労するため、人との出会いや親交に制約もありますが、走ることを通じて出会えた人やご縁が私の人生を拡げてくれています。
私の人生はマラソンでいえばまだ折り返したばかり。記録や順位という数字以上に豊かなものをもたらしてくれる魅力は書き尽くせません。まだまだ学び尽きない奥深さが私の走る理由であり、問い続けたい世界です。人生という走路の途上で当欄にご縁をいただけたこと、新しい力をもらえたことに感謝しています。ありがとうございました。 |
| プロフィール:かねこせいいち。マラソン選手として昨年、聴覚障害者の日本記録を樹立。今年は9月のデフリンピックで3位に入った。山口市。42歳。 |
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| 「ひとの温もり」 |
| 河ア 敏昭(美祢市、美東町文化協会長) |
「自転車で、どちらへ」
「ハイ、写真屋さんまでひとっ走りして来ます」
「村一周の完走は?」
「いえ、まだまだです」
「自転車で村一周」と始まった、『東流西流』のこの欄を読んだ方から多くの声援をいただいた。
「お久しぶりです。あなたの記事を読みました」
「どちら様で? あっ、分かりました。その声」
電話での二十数年ぶりのやり取りである。
体調が回復して良かったと、旧職場の同僚から一枚のはがきも届いた。
「じゃんけんおじさん」(12月6日付)では、多くの方から「愉快なズッコケ3人組は元気ですか」と声をかけられた。「子どもは風の子」、3人組は北風の中を元気よく走り回り、健在である。
赤土のゴボウ畑に座って旧知のAさん夫婦と話し込んだ時。「あと5年は頑張る」と語るAさんの笑顔は80歳とはとても思えなかった。「また、おいでよ」の言葉は、陽だまりのような温もりで、心地よかった。
給食掛紙づくりで「色えんぴつの会」が一枚一枚と仕上げる絵付けにも、手作りの温もりを感じた。
街のストーリーテラー(語り部)として「自転車で村一周」は道半ばだが、道往(ゆ)く人との出会いの中に、ひとの温もりがあった。 |
| プロフィール:かわさきとしあき。山口美祢農協を定年退職後、地元の美東俳句会に入会。2006年から同文化協会(41団体)会長を務める。美祢市。68歳。 |